2013年1月17日木曜日

『なる』っていうのはアライグマくんのスキなところをスキだって言うのに似てるよ。―いがらしみきお 「ぼのぼの」


 誰もがみんな、何かになりたい、と思う。僕は昔マイケルジャクソンになりたかった。舞台の上でみんなを魅了する大スター。彼に一挙手一投足にみんなが目をみはり、歓声を上げる。

 言い換えれば僕はアイドルになりたかった。人々に見られ、褒められることで自己承認欲求を充足したかった。

 幼少のこんな欲求の不完全燃焼、それが僕の制作の動機になっている。子供の頃は誰もがみんなドラゴンボールの孫悟空に憧れた。でもいつかみんな自分は孫悟空でないことに気付く。

 小学生の頃、私はセーラームーンになりたかった。中学生の頃、私は広末涼子になりたかった。美容室に「広末涼子にしてくれ」といって髪を切りにいった。高校の頃私は椎名林檎になりたかった。「ジャニスイアンを自らと思いこんでた 現実には、本物がいるとわかっていた。」と言う歌詞に感銘を受けた。そして私は、マイケルジャクソンに憧れた。アンディウォーホルに憧れた。ジェンダーという垣根を乗り越えるあの超越的な何かに憧れたのだ。僕はいつでも僕ではない何かに憧れ続けている。