地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうど良い感じにカチ割れるんじゃないかというくらいに冷え切った朝だった。 ー谷川流「涼宮ハルヒの消失」
先日ハルヒが地球をアイスピックでつついた際に、地球は真っ二つに割れてしまったのであるが、俺たちは今日も変わることなく不思議を探し求める毎日である。
二つに割れた地球がどのようにして宇宙空間に存在しているのか、重力はどうなっているのか、など、目の前に不思議なことはてんこ盛りなように思うのだが、その辺りにハルヒが興味を抱かないのは古泉流にいうならば常識人であるハルヒの自己防衛のためであるとか何とかであるのだが、落ち着いて考えればわかることだと思うが、常識的な人間はアラレちゃんばりに地球を割ったりしないものである。
ここ数日で人類は絶滅の危機に直面していた。核兵器をはるかに超える超磁力兵器によって、世界の半分を一瞬にして消滅させてしまった(つまり割れた地球の半分がなくなった) 。地球は大地殻変動に襲われ、地軸はねじ曲がり、五つの大陸はことごとく引き裂かれ、海に沈んでしまった。
朝比奈さんは「これも規定事項ですから」と平気な顔で言うのでいくばくかの安心が得られたのであるが、朝比奈さんがどのような未来からやって来たのか、何だか他人事ながら非常に心配になってしまった次第である。
朝比奈さんは孤島に行った時に船が浮く原理を知らなかったので、多分このあと海も干上がるのだろう。
ハルヒは熱心に虫眼鏡で不思議を探している。
「キョン!虫眼鏡で太陽光をアリに集中させると燃えるわ!パイロキネシスよ!きっと!」
高校の成績を見るにハルヒは非常に頭がいいはずであるのだが、時折本当に義務教育を受けて来たのか疑問に思えるようなことを言う。
長門は熱心にアリを両手の親指で潰しているし、朝比奈さんはアリを拾っては食べながら、「昆虫って結構栄養あるんですよね」と言っていた。
超能力者のお株を黒い小さな昆虫に奪われた古泉は、頭からガソリンをかぶって火をつけ赤黒く燃え上がりながら「涼宮さん、超能力ですよ」と言うのだった。
数十分で古泉は灰になってしまったのだが、長門のカドルトによってことなきを得たのだった。灰から蘇生する際に失敗した場合、古泉は永久にロストしてしまうので危ないところだったのだが、これも朝比奈さんの言うところの『規定事項』と言うやつなのだろう。
「最後の長門有希の惑星」完