終末時計が0時2分前である、とテレビのニュースでやっていた。「終末時計」がどう言うものかと言うと、その時計の針が業界用語で言うところの「テッペンをこえる」と、世界に終末が訪れると言われている伝説のオーパーツである。かつてはソビエト社会主義人民共和連邦の総書記とアメリカ合衆国大統領が凌ぎを削ってこの時計を手に入れようとしていたと言う噂がまことしやかに囁かれていた。そして厄災をもたらす「終末時計」は、かのインディアナ・ジョーンズの活躍によって冷戦の終わりとともに永久に葬られたと聞いていたが、どうやらアカ狩りを逃れた共産主義勢力の暗躍によって再び現代に甦ったらしい。
などと長々と語り口上を述べたが、この様な事例が発生した場合、10中108、109はハルヒが原因であることは言うまでもない。先日108つの不思議が集まる時「失われし聖櫃(アーク)」の力によって、再びヒトラーが復活し、共産主義勢力を地上から殲滅するという伝承が古代アッシリアの碑文から発見されたらしいのであるが、今回の件とどの様な関係があるのかは一切不明である。
長門は、来るべきの終末に備えて、キャンプ用のコンロや、寝袋、非常用の水、テントなどの準備に余念がなかった。
何しろ、あと2分で世界の終末がやってくるというのだから、急いで準備するに越したことはないだろう。
そして、ニュースのきっかり120秒後に、世界は終末を迎え、俺たちと共にこの世界の全てはまるで書籍の余白のように、真っ白に塗りつぶされて消えてしまったのだった。
「世界の終りとハードボイルド・長門有希ランド」完